歯科経営者に聴く - 医療法人社団 D&J 平野 大輔 院長(前編)

歯科経営者に聴く(前編)

~第一線で活躍する院長・理事長から学ぶ~

 新潟市の西区に拠点を置く医療法人社団 D&J。現在、「ひらの歯科医院」「新潟西歯科クリニック」「入船みなと歯科」の三院を運営し、地域の口腔医療を支えてきた存在である。D&Jは“100年続く医院”“地域の健康拠点”を目指すというビジョンを掲げ、歯科医療の枠を超えて、予防・メンテナンス・訪問歯科の提供や、職場環境整備、人材育成にも積極的に取り組んでいる。
 今回は、今月と来月の2回にわたり、平野大輔院長に、診療の特徴やスタッフへの想いについてお話を伺った。

  • 【ひらの歯科医院】外観【ひらの歯科医院】外観
  • 【新潟西歯科クリニック】外観【新潟西歯科クリニック】外観
  • 【入船みなと歯科】外観【入船みなと歯科】外観
平野 大輔 院長

医療法人社団 D&J 平野 大輔 院長

【プロフィール】

  • 1980年新潟県 生まれ
  • 2009年新潟大学歯学部 卒業
  • 2009年~2013年東京都内・埼玉県 歯科医院 勤務
  • 2014年ひらの歯科医院 開業
  • 2020年新潟西歯科クリニック 開業
  • 2023年入船みなと歯科 開業

【開業に至るまで】

歯科医師を目指されたきっかけについて教えてください。

もともとは機械いじりが好きで、車づくりなどに携わりたいと考え機械系の大学に進学しました。しかし、実際にはパソコンに向かう時間が大半で、自分の理想とは違うと感じました。そこで「人と関わる仕事がしたい」と思うようになり、さらに医療業界にも興味を持つようになりました。「ものづくり」と「医療」、その両方を実現できる仕事として歯科医師を志しました。

  • 【ひらの歯科医院】受付【ひらの歯科医院】受付
  • 【新潟西歯科クリニック】受付【新潟西歯科クリニック】受付
  • 【入船みなと歯科】受付【入船みなと歯科】受付

理事長(院長)が卒業後の勤務先を選ばれたポイントを教えてください。また、そこでどんなことを学ばれましたか。

研修医時代から開業まで、ひとつの歯科医院で4年9カ月間お世話になりました。そこには私が憧れていた先生がいらっしゃり、その方のもとで学びたいという思いが強かったからです。技術や知識だけでなく、患者様への接し方や医院づくりの考え方など、歯科医師として必要なことをすべて学ばせていただきました。

開業しようと決断した時期 いきさつはどんなことでしょうか。

将来的には地元・新潟に戻って開業することを心に決めていました。目標としていた技術を身につけ、自分なりに達成感を得られたタイミングで「今だ」と開業を決断しました。

開業前に一番不安だったことは何ですか?どう乗り越えましたか。

新潟で診療経験がなかったため、「患者様に来ていただけるだろうか」という不安は少しありました。ただ、振り返ると当時は不安を深く考えるよりも勢いでスタートした部分が大きかったと思います。

開業場所を決めるにあたり、どのようなポイントを重視しましたか。

新潟県は車社会のため、広いエリアから来院しやすい場所として、大きな幹線道路沿いを選びました。内装面では「完全個室」にこだわりました。以前の勤務先でも配慮はされていましたが、どうしても隣の会話が聞こえてしまうことがありました。患者様のプライバシーを守るため、設計段階から完全個室をお願いしました。

  • 【ひらの歯科医院】待合室【ひらの歯科医院】待合室
  • 【新潟西歯科クリニック】待合室【新潟西歯科クリニック】待合室
  • 【入船みなと歯科】待合室【入船みなと歯科】待合室

開業後、理想と現実のギャップを感じた瞬間はありましたか。

開業初日、一番感じたのは“処置の重み”です。例えば仮蓋ひとつにしても「もし外れてしまったら…」「患者様がもう来てくださらなかったら…」と考えるようになり、全てが自分の責任になることを実感しました。また、診療が押してしまうなどご迷惑をおかけしたこともありましたが、温かく受け入れてくださる新潟の患者様に支えられました。想像以上に多くの方に来ていただけたことは、理想を超える嬉しい出来事でした。

【理念・治療スタイル】

経営理念や診療方針を教えて下さい。

当院の経営理念は「地域に貢献される医院でいよう」「100年続く医院を作ろう」「一生感謝される教育をしよう」の3本柱です。

診療方針としては、メンテナンスで継続的に通っていただける医院を目指し、患者様が帰られる際には必ず笑顔でお帰りいただけるよう、日々の言動に気を配っています。

治療スタイルに影響を与えた特定の経験や出会いがあれば教えてください。

これまで数多くの方との出会いがありましたが、特に私にとっての「師匠」と呼べる先生が4人いらっしゃいます。

  • 鳥巣先生(埼玉):矯正治療に特化され、現在も医院経営を含め多くの助言をいただいています。
  • 三井先生:研修医時代から開業までお世話になり、基本的な技術はもちろん、患者様との接し方を細やかにご指導いただきました。
  • 渥美先生:診療の難しさを教えてくださり、先生が主催されるセミナーにも参加させていただきました。
  • 康本先生(康本塾):人を雇うとはどういうことか、経営者としての視点を10年以上にわたり学ばせていただいています。

今後の歯科医療の発展において、理念に基づき医院として特に力を入れたい分野はありますか。

今後は特に「メンテナンス受診率の向上」に力を入れたいと考えています。新潟県の受診率は20~30%程度ですが、定期的な通院によって口腔から全身疾患を予防することができます。そのため、地域の方々が習慣的にメンテナンスを受けられる体制を整えることが目標です。

他の医院との差別化するために工夫している点をお聞かせください。

当院では以下の点を重視し、他院との差別化を図っています。

  • 完全個室の診療室
  • 担当衛生士制の導入
  • 複数名の歯科医師による診療体制
  • 最新設備の導入
  • 待ち時間の少なさ
  • 予約の取りやすさ

開業・運営するうえでの苦労話、ピンチなどはありますか。

開業する際に技術だけに目を向けてしまうと、スタッフを雇用・育成することの重要性を見落とし、失敗する可能性があります。そのため、労務や財務・経理といった経営面を事前にしっかり学んでおくことが、医院運営を成功させる鍵だと実感しています。

どのような増患対策を取られていますか。

増患対策としては「今の時代に合った接遇」を重視しています。スタッフには「患者」ではなく「患者様」と呼ぶよう徹底し、見えない場面でも敬意を忘れないように指導しています。また、できるだけ患者様をお名前でお呼びすることも意識しています。

さらに、当法人の3医院にかかってくる電話をコールセンターに集約し、対応力を高めることで、電話対応のプロフェッショナルを育成しています。これにより、より丁寧で質の高い応対ができる体制を整えています。

各院のキャラクター

続きは、12/1公開の後編で!